2016年04月07日

「つなぐ 〜映画は想いを、映画館は人を〜 」池谷薫監督が大黒座に来館!!【後編】

ルンタ』『蟻の兵隊』の上映に伴い、池谷薫監督が大黒座に来館された濃密な一日をレポートする後編。
(前編はコチラから)

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『ルンタ』上映後に行われた池谷監督のトークを終えて、夕方4時の回は『蟻の兵隊』の上映となりました。

少し人数は減りましたが、引き続き鑑賞される来館者。

そうそう。
大黒座には「はしご割」という、同日中に複数の作品を鑑賞した際に2作品目の鑑賞料金が1千円になる仕組みがあるんですよ。

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『蟻の兵隊』上映後も、池谷監督から作品の舞台裏についての興味深いエピソードが提供されることに。

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元残留日本兵の奥村和一さんと池谷監督の出会いやその後の関係性、「この人の映画を撮りたい」という想いと「自分(たち)の無念や怒りをつまびらかにしたい」という願いがシンクロしたお話を監督から直接聞くことができるなんて、ホントに贅沢なことです。

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普段は色気がありチャーミング。
そんな奥村さんが、戦争の話になると人が変わったようになってしまう。

『蟻の兵隊』では、日本軍の一員として送り込まれたうえ戦後も残留を強いられた中国山西省を、80歳を過ぎた奥村さんが訪ねるなかで、被害者でも加害者でもある自身と格闘する姿を追います。
ふとした瞬間、日本兵だった当時の心が蘇ってしまう場面は、若い頃に叩き込まれた軍隊の教えの凄まじさと教育の恐ろしさを物語っていました。

人間性をはく奪するために行われる「初年兵教育」や、戦争への道を決定づける人間が直接手を下すわけではないという、どの時代も変わらない構図。

重いテーマですが、『蟻の兵隊』を通して「戦争とは何なのか?」を問いかけてみませんか。

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その後、町内のレストランで食事をしつつ、大黒座ロビーではおもむろにテーブルが設置され始めました。

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大黒座のロビーで、一年に何度かもたらされる語らいの夕べ。

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映画監督が訪ねてくださるのも、映画を上映する場があってこそ。
その場がまして映画館なら、それに越したことはありません。

ある調べでは「映画館を運営するには70万人規模の商圏が必要」と言われているなかで、1万3千人を割り込んだ北海道の過疎地でどのようにして今もなお映画館が営まれているのか。
池谷監督が大黒座へ足を運びたいと考えていた理由は、このあたりにもあったのだと思います。

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おっと!
これから映画館の話をしようというときに、ちーたん(看板猫のチビ)のじゃまが(笑)

いつもこうした場になると、館内の片隅で佇むことの多いちーたんですが、この日はやたらとテーブル上に興味を示していました。
イカの珍味が目的だったとわかったのは、この5分後のことです。

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【三上館主(左)と鈴木翁二さん】

鈴木翁二さんは浦河在住の漫画家であり、毎年11月に開催される「大黒座まつり」の実行委員長でもあります。
幻の雑誌「ガロ」で連載をもち、独特の世界観や描写でコアなファンが多い鈴木翁二さんと大黒座・三上館主は同年代であり、若い頃からの同志。

この二人が揃うと、なんとも言葉にしづらい…というか、言葉にした途端に味気なくなるような、言葉にすることで違和感を覚えるような、つまり言葉にすることが意味を成さないような空気が流れます。

そもそも映画や文学の世界は、その一つひとつにメッセージや示唆が込められていても、観たあと読んだあとに何を思うかは私たち受け手次第。
そのなかで人生を歩んできた二人ですから、その空気感をことさら表現しようとすることはナンセンスなのだと思います。


「あの場面が好きだなぁ」「あの撮り方が印象的」「あのときの奥村さんの表情は…」といった反応を受けて、池谷監督が「一つの映画として見てくれて嬉しい」とおっしゃった言葉。
タブーとされる題材に切り込み、ドキュメンタリーを撮り続けてきた池谷監督だからこそ、映画作品としての評価とは別のところでいわれのない言葉に直面することもあったのかもしれません。

しかし、世の中には必ずしも善悪が単純に存在しないということは自明のことであり、だからこそ私たちに考えるきっかけを手渡そうと映画をつくる人がいて、それを多くの人に観てもらおうと映画館が存在しているのだと思います。

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大黒座の周辺ではよく「本当に客を入れようと思っているのかな」「大黒座は“戦争もの”が多いから」といった声を耳にします。

ただでさえ総量の少ないこの小さな町で、さらにターゲットを絞ってしまうの?という指摘はある意味妥当だと思います。
本来上映されている時間帯なのに大黒座に明かりが灯っていない夜があると、サポーターとして寂しい気持ちにもなります。
でも、根底に流れているのは、ただ純粋に「映画館で映画を観てほしい」という館主の想いです。

勘違いされては困るのですが、あくまで大黒座は娯楽施設です。
何しろ館主自身が無類の映画好きであり、子ども向けの作品だって上映したいと思っています。
しかし、小さな単館系映画館では上映したくてもできない事情があるのも事実です。

そのなかで大黒座の「色」をことさら嗅ぎとりたくなる人がいるかもしれません。
しかし、そもそも人には誰しも「偏り」があります。
大切なことは、自分自身の偏りや色をふまえつつ、別のものを受け容れる姿勢ではないでしょうか。
その意味では、大黒座や三上家の“寛容さ”はちょっとスゴいですよ(笑)

図らずも現在上映中の『ルンタ』もまた、他を排除しない生き方を問いかける作品です。
大黒座で観ることに、より一層の意味合いがあるかもしれないですね。

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池谷監督は、大黒座での一日を「夢のような時間」とおっしゃっていました。
その言葉がまた三上館主や鈴木翁二さんを元気づけてくれたことでしょう。

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池谷監督を見送ったのは日付も変わった26時半のことでした。
さすがにちーたんもお休みのようです(翁二さんの上着の上で…^^;;)

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帰り際、何とも絵になる二人ではありませんか。
(写真の左下に佇むちーたんのシルエットもまた丸くてカワイイ…)

池谷監督の来館に伴って訪れた大黒座(とその取り巻き)の濃密な一日は、こうして終わりを迎えました。

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数日後、池谷監督から大黒座に宛てて、監督自身の著書や『先祖になる』のパンフレットなどが届けられました。
そこには再会(再訪)にふれた言葉も。

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また大黒座でお会いできることを楽しみにしています。
このたびははるばるご来館いただき、ありがとうございました。



大黒座の客入りを気にしつつも、経営手腕に優れた館主より不器用でも純粋な館主でいてほしいと願う大黒座サポーターが、本稿を担当しました。

posted by だいこくニャ at 23:55| Comment(0) | イベント@大黒座
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